12月1日 手帳の日

「あれ、海堂？」
「！………乾、先輩…ばんわっす」
「やぁ、買い物かい？」
「……まぁ……」
「手帳？」
「っす…来年の」
「へぇ…、手帳持ってるの見たことないけど」
「…………」


「言ってくれたら一緒に買いにきたのに。どんなの探してるの？」
「……えっと……シンプルで」
「うんうん」
「…カバーが、黒いので…」
「ああ、いいね。飽きが来ない色が一番だ」
「スケジュールに自由に書き込めるスペースが多くて」
「なるほど、いつ書いたかって事は結構重要だ」
「あと…立った状態でも書けるやつで」
「重要だね、いつでもどこでもメモ取れないと持ち歩く意味が無い」
「…えっと、あと…」
「うんうん」



「…どんなのが、いいと思いますか？」
「そうだな……俺は、これがいいな」
「これ？…ああ、カバーとか組み合わせるんすか」
「うん、黒いカバーは…何種類かあるのか」
「皮と、ナイロンっぽいのと…」
「皮かな、手触りもいいし」
「高級感ありますね」
「もう、高校生だし、こういうの持ってても大丈夫かな？」
「いいんじゃないすか」
「あ、でも、海堂だったらこういうビニルでコーティングされてる…」
「……皮でいい」
「え？」
「これにします」
「え？でも、それは俺が欲しいやつで…」
「おい、…」
「は、はい？」



「来年の手帳、買うんじゃねぇぞ」



「え？え？…あっ、ちょっ、海堂っ」
「うるせぇっ…くんなっ」
「………俺もっ」
「…あ？」
「俺も、買い物に来たんだ。付き合ってくれない？」
「………別に、いいすよ」
「よかった。事前のリサーチだけじゃ不安だからね」
「なに、買うんすか？」



「ペアリング」



「………馬鹿野郎」
「ええっ、結構本気だよ？まぁ、でも、当日に買おうと思って下調べに来たんだけどね」
「……………」
「そんな睨むなって。名前彫ったりするなら日にちかかるからさ、どうしようかと思ってたんだけど」
「……ひとりでいけ」
「ええー、やだよー」
「うるせぇ」
「一緒に行こう、ね？」
「…………」
「よし、決まり。会計済ませておいで」
「っす」
「早いけど、ありがとう」
「…うっせ」
「うん、ありがとう」
「聞こえてる」
「うん、好きだよ」
「っ」



FIN